The Chemical Components Of a Cell

今回の担当は
pp47〜68

文章はココにあります!!

【1】細胞の化学成分

この範囲はほぼ高校化学の復習です。

Key Words*1
■原子(atom)
化学的性質を保ちうる最小の粒子

  • 中心部に陽子(proton)中性子(neutron)から成る原子核(nucleus)を持つ
  • 原子核の周りに電子(electron)が存在する
  • 原子一個あたりの陽子の数=原子番号
  • 原子核中の陽子数と中性子数の和=質量数
  • 原子中では陽子と電子の電荷の絶対値は等しい
  • 中性子の質量=陽子の質量=電子の質量×1840(つまり1/6x10^23g)
  • 中性子や陽子は核の中で固く結合しており放射性崩壊や太陽での核反応などが起こらない限り結合が切れることはない(つまり安定であるということ)
  • 電子は電子殻に収容されている(内側から順にK,L,M,N…殻)

 ※生物を構成する原子にN殻以上をもつものはほぼない

■分子(molecule)
いくつかの原子が結合したもの

■元素(element)
物質を構成する基本的成分

  →化学的には同じだが物理的には区別できる原子
   中性子の数は違うが陽子数は同じ

  • 自然に存在するものは92種類
  • 生物の体はこれらのうちC,H,N,Oでありこれらが生体全体の96.5%をしめている

■原子量(atomic weight)/分子量(molecular weight)
炭素原子の質量を12とし、これを基準として測った原子/分子の相対質量
(原子/分子に含まれる陽子・中性子の質量に等しい。電子は無視できるほど質量が小さいので考慮しない)
※原子・分子の単位の質量はドルトン(dalton)ともいう。







【2】生体内の原子どうしの結合

原子どうしの結合には主に次の3種類がある
[1]イオン結合(ionic bond)
陽イオン(cation)と陰イオン(anion)
クーロン力により結合したもの
※イオンは水分子と作用しやすいので塩は水に溶ける。このときそれぞれのイオンは水分子に囲まれる(水和)

[2]共有結合(covalent bond)
2個の原子どうしがそれぞれ価電子(不対電子)を出し合って電子対を作り、電子対が2個の原子に共有されることによってできる非常に強い結合

<COLUMN>
〜MO法(分子軌道法)による共有結合の原理の説明〜
ex.水素分子
2個のH原子が出した価電子が2つの原子で共有されるためにはどうしても電子対をつくらねばならない。電子自信はいずれも自転(スピン)しており互いに逆方向のスピンをもつ不対電子どうしが出会うと互いに反発することなく2つの電子雲は重なり合って共有結合を形成できる。しかし、電子のスピンが同方向を持つ不対電子どうしが出会っても互いに反発して2つの電子雲は重なり合わないので共有結合は形成されない。
一方互いに逆向きのスピンを持つH原子の1s軌道が重なり合うようになると今までの原子軌道は消滅し新しい分子軌道がつくられる。この分子軌道は2つの原子核を包み込むように広がり原子どうしを結びつける。

さらに共有結合には次の3種類がある
Ⅰ.単結合(single bond)
ex.エタン
Ⅱ.二重結合(bouble bond)
ex.エチレン
Ⅲ.三重結合(triple bond)
ex.アセチレン

[3]水素結合(hydrogen bond)
F,O,Nなどの電気陰性度の大きな原子と結合したH原子が近くの電気陰性度の大きい原子の非共有電子対の方向へ近づき静電気的引力に基づく弱めの結合が形成される。


水素結合の主な性質

  • 水が室温において気体ではなく液体として存在する
  • 沸点が高い(結合を断ち切るのにエネルギーが必要だから)
  • 表面張力がある



※電気陰性度の差が大きい原子どうしはイオン結合、小さい原子どうしは共有結合になる


【3】極性分子の水中での性質
極性分子中のH原子
→電子が相手の原子に強くひきつけられHの原子核(proton)に近づく
→水と水和するとH3O+になる

酸(acid)
水に溶けた時にprotonを放出して H3O+をつくる物質

塩基(base)
水分子からprotonを奪い水酸化物イオンの濃度を高める物質

【4】細胞の中の分子

細胞重量の70%は水で占められているが水以外の細胞内の物質はほぼC原子から出来ている
※細胞が作る炭素化合物=有機分子(organic molecule)
 (分子量 100〜1000)

これらには主に下の4種類がある。

[1]糖類(sugar)

縮合(condensation){右方向}、加水分解(hydrolysis){左方向}により
単糖(monosaccharide) 多糖(polysaccharide)
の反応が起こる

☆細胞内にある主なもの☆
グルコース(glucose)…細胞のエネルギー源の中心
動物はグルコースのみから出来た多糖グリコゲン(glycogen)
植物は多糖デンプン(starch)
の形でエネルギーを貯蔵する

[2]脂肪酸(fatty acid)
脂肪酸は2つの部分から構成されている

  • 疎水性(hydrophobic)の炭化水素
  • 親水性(hydeophilic)のカルボキシル基

→よって両親媒性(amphipathic)を持っているといえる

  • 脂肪酸には飽和(saturated)と不飽和の2種類がある
  • 二重結合をもる不飽和脂肪酸は分子に折れ曲がりが出来る

脂肪酸は同じ重量のグルコースの6倍のエネルギーを発生

☆細胞内にある主なもの☆

  • トリアシルグリセロール(triacylglycerol)

分子の液滴として細胞質に蓄えられている

  • リン脂質(phospholipid)


脂質二重層(lipid bilayer)>

[3]アミノ酸(amino acid)

  • 約20種類のα-アミノ酸が存在する
  • ペプチド結合(peptide bond)により

アミノ酸→タンパク質(protein)

※タンパク質を合成しているのはL型のみ!!

<COLUMN>
〜タンパク質をつくるのにL型だけが使われLとDの混合物が使われないのはなぜか??〜

定まった構造をもつ巨大分子を合成するには個々の構成単位には立体異性体のうちの1種類だけを用いる必要がある。あるアミノ酸をL→Dに変えたら違うタンパク質になってしまう。だからタンパク質をつくるアミノ酸がどれもDとLの混合物であったらアミノ酸をつないでも構造は1つには決まらず多くの異なった構造ができてしまう。
進化の過程でタンパク質の構成部材としてなぜLアミノ酸が選ばれたのかというのはまだ分かっていない。タンパク質を作るのにアミノ酸のどれかにDを用いる細胞があっても良いはずである。(その場合はアミノ酸はすべたが同じ立体異性体でなければならないが。)

[4]ヌクレオチド(nucleotide)
窒素原子を含む環状の化合物が五単糖(pentose)*2に結合してできたもの

エネルギーを短期間保有する能力がある
ホスホジエステル結合(phosphodiester bond)*3により
ヌクレオチド核酸(nucleic acid)

塩基(base)

  • ピリミジン塩基(pyrimidine)

シトシン(cytosine)
チミン(tymine)
ウラシル(uracil)

  • プリン(purine)塩基

グアニン(guanine)
アデニン(adenine)<ヌクレオチドの機能>
Ⅰ.加水分解されやすいリン酸無水結合で化学エネルギーを運ぶ
Ⅱ.ほかの基と結合して補酵素(coenzyme)をつくる
Ⅲ.細胞内で特異的なシグナル分子として使われる

☆細胞内にある主なもの☆

  • ATP(adenosine triphosphate)

3つのリン酸基は2つのリン酸無水結合(phosphoanhydride bond)で順に結合
→これが切れるときに多量のエネルギーを放出

塩基:A,T,G,U

塩基:A,T,G,C

【5】細胞内の巨大分子
細胞内の巨大分子には特異的な構造配列がある
酵素(enzyme)の触媒により適切な単量体だけが組み込まれていく

【6】非共有結合による巨大分子の構成
分子内の様々な部分で非共有結合(noncovelent bond)((ファンデルワールス力、疎水相互作用(hydrophobic interaction)))があるため分子の形は限定される
→一番安定な形をとる

*1:参照:三省堂 化学ⅠB・Ⅱの新研究 南江堂 Essential細胞生物学 Garland Science Molecular Biology Of THE CELL

*2:ribose or deoxyribose

*3:糖のリン酸基とヒドロキシル基の間で