FROM DNA TO RNA(pp.302〜335)

文章はココ

TRANSCRIPTION

TRNASCRIPTION
遺伝情報を読み取る際の第一のステップ。
DNAの特定領域をRNA塩基配列にコピーすること。

DNA,RNAの化学的性質の違い

1.RNAヌクレオチドはribonucleotideである
<糖>
RNA:リボース
DNA:デオキシリボース

2.RNAの塩基はA,G,C,U
A-U, G-Cで相補的な塩基対を形成
ただし稀にG-Uの結合もある。

構造上の違い
RNA:一本鎖
DNA:二本鎖

DNAの転写によってRNAが作られるしくみ

  1. 二重らせん状DNAの短い領域が開き、ほどけてDNA鎖の塩基がむきだしになる
  2. DNAの二本鎖のうち片方がRNA分子合成における鋳型となる
  3. RNA鎖の塩基配列は鋳型&取り込まれるヌクレオチドの相補的な塩基対形成によって決まる。きちんとペアになったときは酵素によってRNA鎖にリボヌクレオチド共有結合していく。

              ↓
このようにしてできたRNA塩基配列(transcript)は正確にtemplateとして使用されたDNAと相補的対をなしている。


DNA複製と転写の決定的な違い

合成されたRNA鎖は鋳型になっているDNA鎖とずっと水素結合でくっついたままの状態になっているわけではない。
RNAはribonucleotideが付加された部分のすぐうしろで鋳型鎖から離れDNAは再びくっついて二重らせんを形成する。転写によって作られたRNAは鋳型のDNAからは離れる。
RNAはDNA鎖の一部を写し取ったものなので短い!!!!


RNA polymerase---転写酵素

ヌクレオチド同士をホスホジエステル結合でつないでいき、線状の構造を形成する。


RNAポリメラーゼはDNAに沿って動き、活性部位のDNAの二重らせんをほどいていく。
むきだしになった鋳型鎖に相補的になるように塩基対を重合反応で形成していく。
              ↓
RNA鎖は5'→3'方向にヌクレオチド1個分ずつ伸びていく。
反応の材料:ヌクレオシド三リン酸(ATP,CTP,UTP,GTP)
高エネルギー結合の加水分解によって反応のエネルギーを得る。

RNAは一個の遺伝子から一時間につき1000個以上の速さでつくられる



DNA polymeraseとRNA polymeraseの違い

RNA polymerase:リボヌクレオチドをつなぎ合わせる
 DNA polymerase:デオキシリボヌクレオチドをつなぎ合わせる
②プライマーなしでRNA鎖の合成を開始できる

          • どうしてこのような違いが生まれるのか

RNAは細胞の中で遺伝情報を永久にたくわえておくわけではないため転写はDNAの複製ほど正確さを必要としないから

RNA polymerase
ヌクレオチド10000個のcopyごとに1個ぐらいのミスをする
☆DNA polymerase
ヌクレオチド10000000個のcopyごとに1個ぐらいのミスをする

しかしRNA polymeraseはDNA polymeraseほど正確さがないとはいえある程度の校正機構を持っている
合成中のRNA鎖に誤ったリボヌクレオチドが付加されるとポリメラーゼが後戻りし、酵素の活性部位で誤った部分が切り落とされる。

RNAの種類

TYPE OF RNA FUNCTION
mRNAs messenger RNAs, code for proteins
rRNAs ribosomal RNAs, form the basic structure of the ribosome and catalyze protein synthesis
tRNAs transfer RNAs, central to protein synthesis as adaptors between mRNA and amino acids
snRNAs small nuclear RNAs, function in a variety of nuclear process, including the splicing of pre-mRNA
snoRNAs small nucleolar RNAs, used to process and chemically modify rRNAs
Other noncoding RNAs function in diverse cellular process, including telomere synthesis, X-chromosome inactivation, and the transport of proteins into the ER

RNAの大部分はrRNA!!


転写の開始⇒細胞がどのタンパク質をどれだけ作るかの調節がなされる、遺伝子発現においての重要な部分

細菌のRNA polymeraseの働き

細菌のRNA polymeraseによる転写のサイクル

  • Step1

転写開始位置を示すDNA signalをsigma factor(取り外しが可能)で読み取る。
RNA polymerase分子は一般的にはDNAに衝突すると弱く結合し、長いDNAに沿って滑ったあと離れるが、すべるうちにRNA合成開始点を示す特定の配列を持つpromoter領域に出会うとそこに強く結合する。
ポリメラーゼはσ因子によりDNAらせんの外側にむき出しになった塩基の一部と接触しDNAの塩基配列を識別する。

  • Step2

RNA polymeraseがpromoter DNAに強く結合するとDNAの二重らせんがほどけそれぞれの鎖の塩基の一部がむき出しになる

  • Step3

DNAのらせんがほどけるとむき出しになった2本の鎖の一方を鋳型として運ばれてくるリボヌクレオチドを用いて相補的塩基対を形成する。

  • Step4

ポリメラーゼにより10個ほどの塩基がつながったのちσ因子とポリメラーゼ間の固い結合がゆるんでσ因子が離れる。

  • Step5

この間にポリメラーゼは変形してすばやく進むことができるようになりσ因子がなくても転写が進む。

  • Step6&7

終結シグナル(termination signal)に出会うとポリメラーゼがDNA鋳型と新たに転写したRNA鎖からはなれる。

☆なぜこのサイクルがうまくいくのか―――RNA polymeraseの構造上の特徴

  • σ因子がpolymeraseをpromoterにくっつけ鋳型DNAがほどけ活性部位へと押し出されると動くあご状のものがDNAをはさむとされている。
  • 10ヌクレオチド程が転写されるとσ因子が解離しそのことによってpolymeraseの後ろ側にあるflapが閉じて出口のトンネルを作り新しく合成されたRNA鎖は酵素からはなれる(cf.fig6-11)。
  • polymeraseは伸びている状態で酵素中の方向舵のような構造が形成されたDNA/RNAハイブリッドをたえず引き離す
  • 転写開始時に酵素の立体構造の変化が連続して起こりDNAとRNAをしっかりとしめつけ1個の遺伝子の転写が終わるまで離れないようになっている。

☆DNAの終結signal―――どのようにしてpolymeraseの伸長をとめるのか

  • terminal signalは2個の対称なDNA配列の後にA-T塩基対が続く構成となっていてDNAに転写される際Watson-Crick塩基対を作って折りたたまれ”ヘアピン”構造を取る。
  • polymeraseによる転写がterminatorに達するとヘアピン構造によってRNA polymeraseの可動flapが開き転写産物RNAが出口から放出される。
  • 活性部位のDNA/RNAハイブリッドはRNA鎖を安定な位置で支えるのに十分な強度がないので解離して‘あご’が開き、polymeraseがDNAから離れる。

Concensus Sequence
DNAの塩基配列の中に含まれる、σ因子が直接識別可能な類似した配列。

真核生物のRNA polymeraseの働きについて

真核生物のRNA polymeraseRNA polymeraseを1つしかもたない細菌とは異なり3種類のRNA polymeraseを持つ。<真核生物の3種類のRNA polymerase>

TYPE OF POLYMERASE GENES TRNASCRIBED
RNA polymerase Ⅰ 5.8S,18S,28SrRNA遺伝子
RNA polymerase Ⅱ all protein-coding genes,plus snoRNA genes and some snRNA genes
RNA polymerase Ⅲ tRNA genes, 5S rRNA genes, some snRNA genes and genes for other small RNAs

真核生物と細菌のRNA polymeraseの違い

  1. 細菌のσ因子をもつRNA polymeraseはほかのタンパク質の助けがなくてもin vitroでDNA鋳型を使って転写開始が可能であるが、真核生物のRNA polymeraseはそれができない。真核生物は転写基本因子とよばれる多数のタンパク群がpolymeraseとともにpromoterに集まってから転写がはじまる
  2. 真核生物は転写を始める際、細菌の染色体にはないヌクレオソームや凝縮度の高いクロマチン構造ををとっているDNAを対象にしなければならない。

転写基本因子(general transcription factor)TFⅡ(Transcription Factor for polymeraseⅡ)
上で述べた1.の性質により真核生物のRNA polymeraseは必要な補足因子があることが分かった。RNA polymeraseがプロモーターに正しく結合するのを助けDNAの二本鎖をほどいて転写を開始できるようにして転写開始後はpolymeraseをpromoterから離して伸ばした状態になるようにする。

真核生物の遺伝子のRNA polymeraseⅡによる転写の開始(cf.fig6-16)
       
※TATA box
転写基本因子TFIDが結合するDNAの配列


遺伝子調節タンパクである転写活性化因子(transcriptional activator)がDNAの特異的配列に結合し、RNA polymeraseを転写開始部位へとひきつける。

DNA supercoiling
ねじれの張力によってDNAが取る立体構造。
supercoilingの形成は開かれた部分意外の塩基対形成領域を正常なねじれに戻すためエネルギー的に有利。

  • 真核生物

DNA topoisomeraseがねじれの張力を取り除く

  • 細菌

DNA gyrase(topoisomeraseの一種)がATP加水分解のエネルギーを使ってDNAにsupercoilを取り込みねじれの張力を一定に保っている。

高等真核生物
RNA splysingにより同じ遺伝子からいくつかの異なるタンパク質を合成する。

<転写の伸長期に新生RNAが受ける3種類のprocessing>
①Capping

5'末端に特殊なヌクレオチドが付加される
②Splicing

RNA分子の途中からintronが切り離される
③Cleavage(切断)&polyadenylation
3'末端が形成される

RNA splicing

intron&exon⇒RNAに転写される
⇒新生RNAが誕生
さらにここからRNA splicingによってintronが取り除かれる。

  • mRNA前駆体

5'末端、3'末端のprocessingとsplicingによりmRNAとなる。
なおsplicing一回につきintron一個が除かれる。

〜なぜスプライシングが起こるのか〜
exon-intron構造のおかげで新たな有益タンパク質が出現するようになるからと考えられている。
⇒もともとある遺伝子の一部が組み合わさるので新たなタンパク質を指令できる遺伝子が進化しやすい。またsplicingのおかげでゲノムの情報量が大きくなる。

RNA splicingの起こる仕組み(cf.figure6-29)
比較的短い(200bp未満)RNA分子がintron/exonの境界を識別する。

  • snRNA(small nuclear RNA)

mRNA前駆体のスプライシングにかかわる5種類(U1,U2,U4,U5,U6)のRNA分子。
タンパクサブユニットと複合体を形成し、snRNP(small nuclear RiboNucleoProtein)となる。
⇒snRNPを核にしてmRNA前駆体のスプライシングを行うRNAとタンパク質であるスプライソソーム(splicesome)が形成される。

スプライシング反応ではRNA-RNA再編成が起こるのでRNA配列を化学反応がどんどんと進行するまえにチェックでき精度が高まる。

スプライソソーム(splicesome)
mRNA前駆体上でいくつかの成分が集まって生まれる。スプライシング反応が進むにつれ成分がくっついたりはなれたりする。
splicesomeを構成するタンパク質、RNA helicaseはsnRNP内部もしくはsnRNPとmRNA間で起こるRNA-RNA結合を壊す際にATPの加水分解によって生じるエネルギーを使う。

〜なぜ再編成されるのか〜
スプライソソームに活性触媒部位を作ることでスプライシングの誤りを防ぐことができるから。

成熟したmRNAの行く先
〜どのようにしてmRNAとprocessingの際に出る不要物を選別するのか〜
※mRNA≪不要物

mRNA ――→ タンパク質
↓  翻 訳
核から細胞質に運ばれる
(この過程で核膜孔複合体が完成したmRNAのみを通す。)

〜mRNAがnuclear pore complexを通るための条件〜
mRNAにcap-binding複合体などのタンパク質が存在しsnRNPなどのタンパクが存在しない状態になる必要がある。
⇒適切なタンパク群が結合しているときにのみ細胞質に運ばれる。

rRNA(ribosomal RNA)-細胞内のRNAの中で最も多い


核小体(nucleolus)

  • rRNAのprocessingとribosomeへの組み込みをする。
  • ほかのオルガネラとは違って膜に囲まれていない
  • rRNAの遺伝子、rRNA前駆体、成熟したRNA,rRNA processing酵素、snoRNP,ribosomeのタンパクサブユニット、生成過程にあるリボソームなどが集まって巨大な凝集体を作っている。

※核内にあるその他のもの

膜を持たない

  • Cajal小体
  • GEMS(gemini of coiled body)
  • interchromatin grannle cluster

RNA processingに関連する成分が集まり、貯蔵、回収、再利用される場になっている。