ABSTRUCT
ウシの冠状動脈内皮細胞(BAEC)の受容体PAR-4を活性化することでGi/oタンパクがNO生成に関与するかどうかを調べる実験
NO生成量が自身の濃度に依存する
①AYPGKF-NH2*1
②thrombin
③ionomycin
の3物質を用いた結果
- ③はCa2+の濃度を自身の濃度に応じて上昇させる。
- ①と②はCa2+濃度を上昇させない
- BAPTAを細胞に加えるとNO生成とCa2+濃度の上昇が妨げられるが①によるNO生成には影響しない
- 百日咳毒素(pertussis toxin)は①によるNO生成を抑制するが②によるNO生成は抑制しない
ということが分かった。
これにより
- PAR-4の活性化はCa2+シグナルとは関係なくNO生成を引き起こす
- Gi/oタンパクは血管の内皮細胞におけるNO生成に関与している
という結論が導かれた。
AYPGKF-NH2 | thrombin | ionomycin | |
---|---|---|---|
produces NO in a concentraion dependen manner | ○ | ○ | ○ |
elevate [Ca2+] in a concentration dependent manner | × | × | ○ |
loading of cells with BAPTA inhibit NO production | × | × | ○ |
loading of cells with BAPTA inhibit [Ca2+] elevation | / | / | ○ |
treatment with pertussis toxin inhibit NO production | ○ | / | × |
*1:PAR-4を活性化するタンパク質
Discussion
1.PAR-4活性化によるNO生成
-
- Ca2+濃度の上昇には関与しない*1(←血管内皮細胞中ではGi/oタンパクが関与している)
- BAPTA混合により耐性を示すようになる
- pertussis toxinにより阻害される
2ionomycinによってひきおこされたCa2+濃度の上昇及びNO生成
BAPTAを細胞に加えると[Ca2+]上昇、NO生成は阻害された(ionomycinが1μMの場合)
↑
↓
BAPTAを細胞に加えても何も変化がなかった(ionomycinが10μMの場合)
⇒10μMのionomycinによって起こった[Ca2+]の上昇は大きすぎて細胞内のBAPTAによってキレート化できない。
※ionomycinは体内では10μMにはなり得ない*2ので不適切
3.PAR-4AM,AYPGKF-NH2,thrombinによって引き起こされたNO生成
-
- [Ca2+]上昇には関係ない
- BAPTAを細胞に加えても阻害には起こらない
4.BAECsにおけるPAR-1AM,AYPGKF-NH2によるNO生成量
わずかだった
3&4⇒thrombinによるNO生成のほとんどはBAECs中のPAR-4が仲介していてPAR-1はほとんど関与していない
5.PAR-1の活性化はPAR-4の活性化とは対照的にCa2+シグナル,NO生成と関連性がある
-
- PAR-1の活性化:Ca2+が関与するNO生成も、関与しないNO生成も活性化する
- PAR-4の活性化:Ca2+が関与しないmechanismのほうを活性化する
6.pertussis toxinの実験(Fig.4)
PAR-4を活性化することでGi/oタンパクがCa2+の関与しないNO生成を仲介する*3
Involvement of Gi/o in the PAR-4-induced NO production in endoth
SCIENCE DIRECTのこれからの実験に関係ある大事な論文。
参考資料3 遺伝子の本体がDNAであることを証明する実験
1.Averyの実験
でもその前に…Griffithの実験
- 肺炎双球菌を用いる
- 肺炎双球菌→病原性もつもの:S型菌
- もたないもの:R型菌
- S型菌でも煮沸して殺してから注射したらネズミは発病しないがこれに生きたR型菌を混ぜて注射すると発病してネズミは死んだ。
- その死体からはS型菌が検出された
- ↓
- 死んだS型菌に含まれていた物質がR型菌をS型菌へと形質転換させたことを示している
- 形質転換…細胞や生物が形質をかえること
- 〔形質を決めるのは遺伝子なのでこの転換は遺伝子と関係があると考えられていた〕
[fig6]
•肺炎双球菌を用いる
•肺炎双球菌をネズミに注射しなくてもR型のものをS型とともに培養するだけで形質転換がおこることを発見
•S型菌の死菌と混ぜなくてもS型菌からの抽出物を加えるだけでR型菌がS型菌に形質転換することがわかった
•形質転換活性は炭水化物や脂質、タンパク質を分解する酵素で処理しても失われなかったがDNA分解酵素で処理したときだけ活性が失われた
↓
形質転換を引き起こす物質、つまり遺伝子の本体がDNAであることが示唆された
2.HersyとChaseの実験
バクテリオファージ*1をもちいた実験
[fig.7]
細菌がバクテリオファージに感染される
↓
細菌はそれと同じファージを大量に生産するようになる
↓つまり
ファージの持っていた遺伝子が最近の細胞の中に入ることによって細菌の形質が変わる
•DNAとタンパク質の性質の違い*2を利用
•放射性同位体のSとPで標識したファージを作成して大腸菌へ感染させた
•ファージは感染するときには体の一部を細菌に接触させ外殻に包まれている物質だけを細胞の中に注入するので感染後に細菌を含む培地をミキサーで拡販することによって細菌の中へ入らなかったファージの外殻を取り除くことができる
•大腸菌の中にはPで標識された物質だけがみつかりSで標識される物質はみられなかった
↓
ファージから大腸菌に注入されるのはタンパク質ではなくDNAであるということが分かった
CHROMOSOMAL DNA AND ITS PACKAGING IN THE CHROMATIN FIBER(pp.198〜204)
■真核生物のDNAは一そろいの染色体の中に詰め込まれる
•染色体(chromosome)
核の中にある。一本の長い線状DNA分子とそれに結合したタンパク質(クロマチン)から成っていてタンパク質がDNAを折りたたんで詰め込み圧縮した構造を取っている
[fig2*1]
•相同染色体(homologous chromosome)
母親、父親からそれぞれ一個ずつ受けついだ2copyずつの染色体
•核型(karyotype)
細胞分裂中期のヒトの染色体46本(男女共に22対+2本の性染色体〔♂:X&Y,♀:Y&Y〕)を並べたもの
↓
バンドパターン、染色体標識パターンの変化により染色体の異常を検出出来る
参考図pp199 Figure4-10<参考>
[fig3*2]
■ヒトの遺伝子の配列の様子<ヒトゲノム計画によって明らかになった特徴>
1.ヒトゲノム内にタンパク質・構造RNA・触媒RNAを指令する部分が少ない。進化の過程で挿入されてきた動くDNA断片が殆どの部分を占めている。
2.遺伝子が平均27000塩基対と大きい。非コード領域=イントロンが長いため。
3.各遺伝子にはイントロンとエキソンの他、調節DNAがある。
4.重要な情報が無秩序な、危険な状態で存在している。
■類似生物間のDNA比較によりわかること
人間の染色体の塩基配列解析における最大の障害
→・配列に無駄が多い
・ほとんどが重要でない部分である
<ヒトとマウスの間のシンテニー(遺伝子順序)の保存(conserved synteny)>
☆原則☆
意味を持つ配列は進化において保存され、意味をもたないものはrandomに変異する
↓
ヒトの塩基配列をマウスetcの類縁生物ゲノムの対応領域と比較する
↓
2種類のゲノム間でよく似ている領域=保存領域(conserved region)
重要な機能をもつexonや調節配列を含む